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第16回(2003/7/28)
『七人の侍』("Seven Samurai", 1954)
最近「アメリカで黒澤映画が見直されている」との記事を読みました。なんでも字幕を新しくしてDVDを発売しているそうです。今のハリウッドは表面上だけ派手なものが多く、心に訴える作品が減っているように感じます。また、「なんでもやりつくした」感があり、昔の作品のリバイバルやコミックの映画化など、アイディアにも乏しくなっているのが現状。そんな時期だからこそストーリー・演出に優れた黒澤映画が再評価されているのでしょう。ただ、アメリカで「千と千尋の神隠し」がヒットしなかった理由はあの「メッセージ」にあると言われているので(見る人自身が非難されているような気がするそうです)、見る人の心底に奥深く入りこんでくる黒澤作品をアメリカ人がどれだけ見てくれるかは正直分かりません。
「七人の侍」は間違いなく映画史上最高の作品のひとつであるといえます。そういう意味でいうとアメリカ人のみならず、多くの人に見てもらいたい映画です。アクション、恋愛、悲哀、スリル・・・娯楽映画のすべての要素が含まれていて、スローモーションや音楽を効果的に使うなど演出も巧み。この作品は世界の映画人に影響を与えたと言われています。
そして特筆すべきは俳優陣の個性。リーダー格の志村喬を筆頭に三船敏郎、宮口精二、稲葉義男らが本当に素晴らしい演技を見せています。侍も決してヒーローではなく、見る側に共感を覚えさせます(やれ「ナイフの達人」とか、それぞれが何か特技を持ったヒーローという形で無理やりに個性を持たせた「荒野の七人」とはこのあたりが違うところです)。そして決してハッピーエンドというわけではなく、ラストはうーんとうならせる「これぞ黒澤節」という結末になっています。
「七人の侍」と「生きる」はアメリカでリメイクの話があるそうです。かつての「荒野の七人」のようにならないことを祈ります。ストーリーは結構単純なので、脚本・演出と俳優の個性にすべてがかかってくると思われますが、そういう意味では黒澤映画のように「見る人の心を打つ」というレベルにまで押し上げるのは難しいでしょう。
昭和29年の映画で3時間半は異例の長さですが、絶対に見る価値はあります。今の日本映画にもこのくらいパワーがあれば・・・そう思わずにはいられません。
評価(5つが最高):★★★★★(このコーナー初の5つ星)