第3回(2003/3/20)
『聖者の眠る街』("The Saint of Fort Washington", 1993)

 こんな血なまぐさい時にこそ見てほしい映画があります。それが『聖者の眠る街』です。単純に戦争の愚かさという観点からすると『チャップリンの独裁者』(1940)のようなストレートに訴える作品をオススメするべきなのかもしれません。そして戦争の狂気・悲惨さということを考えれば、『シンドラーのリスト』(1993)や『ライフ・イズ・ビューティフル』(1998)、あるいは現在公開中の『戦場のピアニスト』などを見るべきでしょう。しかし、私はあえて『聖者の眠る街』を見て、個々人の命の尊さというものをあらためて認識してほしいと思います。

 この映画は戦争とは全く関係ありません。しかし、いつの時代もどこにいても人々は必死で生きている。「命」とは?「人生」とは?そんなことを考えさせられる映画です。社会の底辺で必死に生きている人たち・・・そんな彼らにも夢があり、希望がある。誰にもその夢や希望を奪う権利はない、そんなことをあらためて気づかせてくれます。

 ストーリー自体はシンプルで、たんたんと進行していきます。冬のニューヨークでの物語なので、とても寒そうな雰囲気が痛いほど伝わってくるのですが、逆に心はほんわか温まります。この終わり方に納得がいかない人がいるかもしれませんが、タイトルを考えればなるほど、と思うでしょう。
 マット・ディロンが繊細な青年を演じ、新境地を開きました。そしてダニー・グローバーが仲間のホームレスを演じているのですが、なんともいえない温かい雰囲気をかもし出しています。ディロン演じるマシューのように、こういった暗い社会に光を照らす「聖者」が現実に現れて欲しいと願う今日この頃です。
評価(5つが最高):★★★★


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