第34回(2004/11/4)『隠し剣 鬼の爪』(2004)

 山田洋次監督最新作。アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされた『たそがれ清兵衛』同様、藤沢周平原作の時代劇です。登場人物は違いますが、幕末それに主人公が東北・海坂藩の平侍であるという点は共通しており、『たそがれ・・・』とは兄弟作品のようになっています(黒澤監督の『用心棒』『椿三十郎』のような感じでしょうか)。
 物語も非常によく似ており、時代劇の新境地を開いた『たそがれ清兵衛』を見た人には正直言って真新しさはないかもしれません。しかしながら、ひたすらつつましく静かに生きた侍の生き様はなんともすがすがしく、一味違った作品に仕上がっています。
 とにかく美しい映画です。雄大な自然、それにピッタリはまる音楽、そして温かい方言・・・こんな日本映画を長い間待っていたような気がします。侍映画といえば派手な殺陣に代表されるようなアクション主流で、ストーリーはワンパターンで無視されがちですが、平侍の普通の生活、そして人生を深く見事に描写したこの映画は、世界に出しても恥ずかしくない作品と言えるでしょう。
 『たそがれ・・・』よりも明るい作品になっています。四季折々の美しい山野もそうですが、ところどころにユーモアを散りばめて作品にメリハリをつけており、最後はなんともいえない感動が待っています。さすがに寅さんや『幸せの黄色いハンカチ』などを作った山田監督、観客が感動するツボを心得ています。
 人間の醜さ、おろかさ、それに身分を越えた愛や人を思いやる気持ち・・・時代を超えていろいろなことに気づかされました。個人的には『たそがれ・・・』よりも好きな作品です。絶対オススメの1本。かつての黒澤時代劇に匹敵するような山田時代劇に今後も期待したいところです。

評価(5つが最高):★★★★☆


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