
季節の花々・上高地
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エゾムラサキ |
ニリンソウ |
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ツクバネソウ |
エゾノコリンゴ |
(c)Mitsuo Tabata,1996All Right Reserved
撮影日:Jun.05-06,1997
上高地の花々
エゾムラサキ(Myosotis sylvatica)
ワスレナグサは同属であるだけにこのエゾムラサキと非常によく似ている。
だが、この花はヨーロッパ原産の帰化植物で信州松本盆地と北海道根室付近に
帰化しているだけだから、野外では混同することはまずない。
ハマワスレナグサもノハラムラサキも同様に帰化植物であるので、このワスレナグサ属の
エゾムラサキは日本においては一属一種の植物なのである。
北半球の温帯には約四○種があるとはいっても、日本では分布地も限定される貴重な花である。
エゾムラサキの名は北方に生えるムラサキグサのことで、別名にミヤマワスレナグサがある。
このワスレナグサの名は中世のドイツに伝わる話からで、恋人のためにこの花を摘み取ろう
とした騎士が河に落ち、そのとき摘み取った花を恋人に投げて”われを忘るなよ”と叫んで
死んだことからだという。
ニリソウ(Anemone flaccida)
イチリンソウとイチゲソウとはともに一花を意味する名前である。これに
対してニりンソウは当然のこと、二花をつける植物ということになる”一輪
咲くから一輪草、二輪咲くから二輪草”ということばが教えるように、イチ
リンソウは茎頂に一個しか花をつけないか、ニリンソウの方はときどキこの
ことばに反して一個しかつけなかったり、二個つけている場合も見うケられ
る。さらにサンリンソウの名を持つ仲間もあるが、これもニリンソウと同じ
く、花は1〜3個と不正確なつき方をすることが多い。
この三つの花は初夏というよリ晩春に開花するが、その命はまことに短く、
二ケ月ほどで地上部は枯れてしまう。また、他の草木の葉が繁茂しないうち
に充分の陽光を浴びて生を終えるため「春の陽炎−−スプリング・エフェ
メラル」といわれるが、とキとして針葉樹林下に大群落を作っているのを見
と、もともとそれほど太陽光を必要としないのかもしれない。
イチリンソウはどちらかというと暖地植物の仲間であり、ニリンソウとサ
ンリンソウはいずれも寒さに強い北方系の植物であることは、その分布状態
でわかる。
ツクバネソウ(Paris tetraphylla)
この植物は、キヌガサソウとエンレイソウの仲間と非常に近い関係にある。
その共通した特徴は何枚かの葉が輪生し、その中央部から花茎を出して一個の
花をつける点である。
ツクバネソウ属はヨーロッパやアジアなどの旧大陸だけにしかない植物で、
全部で約二○種、日本にはそのうちの三種一亜種だけが分布している。エン
レイソウ属の植物は染色体数が少なく、核型解析資料として利用されている
が、このツクバネソウ一種はさらに少なく、染色体数10の二倍種である。
ツクバネソウの名は形態からのもので、四枚(ときに五枚)に輪生する葉を
正月の羽子つき遊びに使う羽子にたとえて、衝羽子草の字をあてる。
クルマバツクバネソウも同様で、六〜八枚に輪生する葉の形状に草葉
を冠したものである。この両者はともに目立たぬ花でつい見すごしてしまう
ことが多いが、それは外花被四片がともに緑色で、小葉のように見えるから
で、ツクバネソウはともかく、クルマバツクバネソウの方は実際には意外と
大きな花であり、花そのものの形としては両者ともなかなかおもしろいもの
である。
ズミ(Malus sieboldii)
リンゴ属は北半球の温帯に約三○種が分布しているが、日本には六種ほど
しかない。このリンゴ属の花序は一見すると束生状に思えるが、それは中軸
が短いためで実際には総状である。果実も小さく、酸味と渋味で食用になら
ないが、この味がズミ(酸実)の名のもとである。
また、この木の樹皮を染料に用いたことからの染み(ソミ)が語源だともいう。
甲信地方ではこのスミのことをコナシといい、この種が群生する地に小梨ケ原
(富士山麓)、小梨平(上高地)の名をつけているが、この種はナシ属ではない。
別名はコリンゴ、ヒメカイトウで形態から生じ、ヒロハオオズミは、ズミの変種であるオ
オズミと同じく、果実がやや大きくなるためで、エゾノコリンゴともいう。
クサボケは種小名のしめすとおり日本の特産種で一属一種、中国原産の園
芸種ボケとは別種である。クサとついていても草本ではなく木本種で、白花
品はシロバナを冠して呼ぷ。シドミ、スドメ、ノボケ、ジナシなどの別名が
あり、果実は酸味と渋味で生食はできないが、果実酒用として一級品である。
白籏史朗著「高山植物」東京新聞出版局発行
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