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7月も中旬を過ぎ、梅雨もあけると、登山者や観光客がどっと押し寄せるシーズンを迎える。幾多の高山植物が、お花畑で一同に咲き競う。山頂付近には、まだ残雪があり、大雪渓ではサマースキーも楽しむことができる。山麓の渓水は冷たく、空気は清涼で、乗鞍高原や奥飛騨温泉郷は、避暑地としても訪れる人が多い。
8月も下旬になると、お花畑も枯れはじめ、山には秋の気配が漂いはじめる。9月下旬〜10月中旬頃には、真っ赤に燃えるナナカマドや黄金色のカラマツなどの紅葉で、山は錦に飾られる。また、時を同じくして、山頂付 近には初雪が訪れ、山頂から山麓にかけて三段染めが見られる11月になると、樹木も葉を散りつくし、冷気と ともに冬が一気に訪れる。日に日に寒さが厳しくなり、山頂から山麓にかけて一面の白銀の世界に変わってい く。そして自然は冬の深い眠りにつくが、今度は待ちかねていたスキーヤー達が、山麓のスキー場にどっと押し 寄せる。乗鞍の四季はそれぞれの趣をもつが、新緑ど紅葉の頃の自然が一番美しく、深く胸打つものがある。
乗鞍の魅力
乗鞍岳は標高3026m、わが国では第19位の高山である。その乗鞍の魅力は、まず何といっても、山頂辺くまで整備されたドライブウェイが通じ、どんな体力のない人でも、老若男女、誰もが、雄大な景観、群れなす高山植物の可憐な婆、清澄な空気と、高山の雰囲気を手軽に心ゆくまで味わえる点こある。
また、山そのものだけでなく、山麓には魅力ある高原が広がり、四季ごとに美しい景観を展開し、湯量の多い趣ある温泉地を随所にもち、訪れる人の心と体をリフレッシュしてくれる。そんなわけで、乗鞍という山を訪れる人は四季を通じて絶えることがない。とりわけシーズン中は、どこかの繁華街かと見まがうばかりの賑わいを見せている。このように、今や乗鞍は一大観光地と化している。
反面、車で手軽に登れる山となったがために、登山対象としての山とは見なされなくなり、山男連中は遠ざかりゆくばかりといった状況にある。乗鞍岳にはアルピニスト達の垂延の的になるような岩場があるわけでもなく、山 男にとっては、ハイヒール姿のギャルが山頂付近までたむろするような俗化した乗鞍などおよびでないというわ けだろう。そして、昔ながらの登山道は廃道化の過程をたどりつつある。
しかし、人々で賑わう山頂を一歩離れれば、歩かれなくなったがゆえにかえって、無垢の姿の ままの大自然が、訪れる人を歓待してくれる。乗鞍は、手軽な万人向けの山であるとともに、大自然を心から愛 する木当の山好きのための奥の深さをもつ山でもある。
出典:昭文社 山と高原地図「乗鞍高原北アルプス」