| 2000年 9月9日 |
悪性腫瘍発見 | 初めての胃カメラ検査で、胃に腫瘍が発見され精密検査を受けるよう指示される。せいぜい胃潰瘍かなくらいにしか考えておらず、頭が真っ白になった。結果を聞いた次男と妻の嗚咽が2階まで漏れてきて一緒に泣いてしまう。 |
| 9月12日 | 胃癌告知 | K大学病院で精密検査の結果、医師に呼ばれ妻と二人の目の前で進行性胃癌の宣告を受ける。入院・手術の準備であわただしい日々がスタートする。 |
| 9月29日 | スキルス癌 告知 |
会社に電話があり、本人抜きで話があるという。不安が胸をきゅっっと締めつける。「残念ですが、3ステージのスキルス癌です。」その後、手術方針や治療のことを話されるが、頭の中がぐるぐる回っていた。あの逸見さんを奪ったスキルスだなんて信じられない。ただこの時はこれほどスキルスが恐ろしいものとは考えなかった。妻にはスキルスは伏せて、胃を切除することだけ伝えることで合意する。 |
| 10月2日 | 入院 | やっとのことで入院できた。この1ヶ月笑うだけでも胃が痛くなるなど不安な毎日が続いていた。前夜の雨で朝もやにかずむ道を家族4人で病院へ向う。このときに2度とこの家に戻ってくることが出来ないなどと考えもしなかった。 |
| 10月3日 | 結婚記念日 | 25回目の結婚記念日。恒例となった薔薇の花束を持って見舞う。すでに食事はストップされ点滴が始まっている。ひまらしく新聞やラジオを持ってきて欲しいという。 |
| 10月12日 | 手術 | 8時半麻酔を打たれて、手術室へ向う。息子たちや三鷹の姉妹が立ち会う。9時執刀開始。家族は控え室で待たされる。早めに終われば手がつけられなかったということ。長ければ病状が悪いこと。どっちにしても待つ身にはひどく長い時間に感じられた。午後二時半。手術終了。医者から経過の説明を受ける。目の前の置かれたぼろ雑巾のような妻の胃。全摘だった。リンパ節転移も18箇所あり、数個は取れなかったといわれる。腹水も360ccあり腹膜播種であった。食道の一部にも癌細胞が発見されぎりぎりまで切除して腸とつなげるという6時間に及ぶ大手術であった。そして追い討ちをかけるように「余命2〜3月から1年といったところです」と告げられる。みな茫然自失で口を開く元気も無い。がらんとした待合室で神を恨んで大声で泣き明かす・・。 |
| 10月13日 | 集中治療室 | 鼻にチューブは入っていなかったが、酸素マスクをあてられ、痛い、痛いと脂汗を流している姿に、思わず頑張れと声をかける。脳裏に入院の前夜「ちょっと抱いて」とすがって「怖い、ひとりで死ぬのは寂しい」と泣く妻に「寂しければ俺も一緒に逝ってあげるから、安心して・・・」と二人で泣いた夜を思い出す。 |
| 10月14日 | お見舞い | 今日は痛みも少し和らぎ歩行練習を始めた。後は縫合部の経過が良いことを祈るだけ。 最近、自分の身体の変調が気になる。胃が痛い。下腹から背中にかけて痛みが走る。昨夜は薬を飲んでも眠れなかった。ここでダウンしたらそれこそ一家崩壊になってしまう。頑張らねば・・・。 |
| 10月15日 | 体調不良 | 今日はまた痛みがひどいらしい。痛みのリズムが交互にやってくるようだ。静子のいない生活を思うと、妙に息苦しくなる。呼吸が出来ない感じに陥り「わっ」と叫んで現実に戻るような感じだ。昼はなるべくそういう思いに落ち込まないよう努めているが、夜は無意識・無防備状態の中で突然虚無感に襲われてしまう。夜が怖い・ |
| 10月16日 | 発熱 | 熱が出たようで水枕をしている。絶え間ない痛みとの戦いは精神状態をも変えてしまい。子供たちにも「用がないからこなくていい」といったらしい。早く痛みから開放されればいいのだが・・・。 |
| 10月17日 | 母のこと | 明日から一般病棟へ移るという。ここまでは痛み以外は順調に来ているということか。それにしても、TVを見るでもなく、新聞を読むでもなく、誰と話すでもなく、じっと目を閉じてひたすら痛みに耐えているのだろうか。いったいその小さな身体で何と闘い、何を考えているのだろう。術後は人が変わったように喋らなくなった。不安と我慢比べをしているように・・・・。亡くなったお袋のことを思い「あの時もっとお母さんの辛さをわかってあげればよかった・・・」という。そんなこともうどうでもいいんだ。今を生きてくれ。しっかりと一秒一秒を刻みながら生きていて欲しい。 |
| 10月19日 | 食事許可 | 腸と食道の縫合はうまくいったようで、今日から食事の許可が出る。水から始めて、重湯へと移っていく。はやく栄養をつけてほしい。 |
| 10月20日 | 食事開始 | 重湯とお茶一口を流し込んだが駄目だった。動悸がして戻してしまう。無理も無い、初体験だもんね。あせらずいこうよ、し〜ちゃん。 |
| 10月22日 | 拓巳誕生日 | 拓巳21歳の誕生日。見舞いの帰りにステーキ屋に寄る。いつもなら家族四人で囲むテーブルがポツンと席がひとつ空いている。これから先ずっとこうなってしまうのだろうか。これが失うということの証なのか。いつまでも親子4人で誕生日が祝えるとは思ってないが、どうしようもない力で引き裂かれるのは悲しいし、辛い。みなほとんど無言で食事を終える。 |
| 10月23日 | 主治医と面談 | 18のリンパ節のうち、17から癌細胞が発見されるという壮絶なスキルス癌だった。癌性腹膜炎もあり、結腸にも癌細胞が見られるという。何もしなければ1〜2ヶ月抗癌剤で2〜3ヶ月から1年の余命と告げられる。いったいどこで人の余命が計れるのか?!無念さを胸に奇跡を祈る。 |
| 10月29日 | 四角い風景 | しばらく調子が良かったが、今日はまた吐いてしまった。今TVの「おしゃれ関係」に浅田美代子が出ている。44歳だそうだ。古舘や満里奈と楽しそうに笑っている。四角いブラウン管から見える社会は数ヶ月前と何も変わってないみたい。 でもある日を境に、まったく別の異次元の世界に入り込んでしまったようだ。そしてこの空間からは死ぬまで抜け出すことは出来ないのか?! |
| 闘病日記 |